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[読書メモ]『モラル・ハラスメントが人も会社もダメにする』


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p8
モラル・ハラスメントというのが会社の利益を損なう形(特に長期的に)で行われていながら、会社のため〉、〈利益をあげるため〉、〈仕事のため〉と、まさにそれとは反対の口実のもとに、巧妙に行われることです(本書を見れば、その例は枚挙にいとまがありません)。

p8
ことは単純に〈意地悪な社員が弱い社員をいじめる〉という社員同士の個人的な問題ではなく、システムも含めたマネージメント問題なのです。

p13
そのやり方は、猫がねずみをいたぶるようで、一見とるに足らない小さな嫌がらせの積み重ねによって、被害者は精神的に追いつめられ、心身症やうつ病になったり、場合によっては自殺にまで追い込まれることがあります。

p35
モラル・ハラスメントの目的は、多かれ少なかれ悪意を持って(場合によってはその悪意を意識しないことすらある)、相手を傷つけることである。仕事の効率をよくしようとか、生産性を高めたいとか、そういった意図はまったくない。ただ、なんらかの形で目障りな人物を追い払いたい、それだけである。これは仕事にとっても、また企業そのものにとってもよい結果をもたらさない。

p52
モラル・ハラスメントは自分とは異質なものに対する拒否感から行われることがある。これは〈差別〉にきわめて近い[。]

p61
このように、いくつかの企業では従業員を管理するのに〈恐怖を利用する〉といった方法が使われている。上層部から圧力がかかると、社員は恐怖を感じ、その恐怖は上から下へ伝えられていくのだ。この場合、子供のように恐怖を感じたというのは恥ずかしいことなので、そのことを認めるのは難しい。

p75
仕事を利用して嫌がらせをするというのも、モラル・ハラスメントの方法である。それはたとえば、ある仕事を言いつけておいて、そのいっぽうでその仕事ができないようにする、といった方法である。

p77
モラル・ハラスメントが行われる時、被害者の〈仕事〉が標的にされることはめったにない(それは仕事の出来不出来とも関係がない)。相手を傷つけようと加害者が意識しているかどうかはともかく、〈仕事〉ではなく〈人格〉が攻撃されるのである。このため、たとえ加害者が複数だったとしても、攻撃は個人的な形をとる。

p82
モラル・ハラスメントの場合、嫌がらせというのは、たいてい偶然起こったような形をとる。そうしそれが毎日、形を変えて行われるのだ。

p89
だが、ここでひとつ問題がある。それは〈悪意を意識していたかどうか〉というのが、それほど簡単に区別できるだろうか、ということである。そういった観点から、私は悪意を意識していたかどうかを、〈意識_無意識〉の形で二分化しない。

p90
「仕事のためだから、しかたがない」、「会社のためにやったことだから、私がいけないのではない」といった、そんな言葉が事態を軽くするのだろうか? もし誰かがある人の行為によって傷ついたのだとすれば、傷つけた人の意識はどうあれ、まずはその結果を重く見るべきではないのか? それとも、はっきりと意識して行ったことだけが重大だと考えるのか?〈定義〉のところで紹介した共産党の法案のように、意図的に行われたものだけをモラル・ハラスメントだとするなら、今度はその〈意図〉をどのように証明すればよいのだろうか?

p95
世の中には被害者の立場になりたがる人たちがいる。そういった人たちは自分から進んで困難な状況から抜けだそうとはしない。というのも、自分は被害者だということであれば、そのことで不平を言うことができるし、何よりも自分の不幸な人生に意味を与えることができるからである。

p105
ドイツ出身の心理学者で、スウェーデンで産業医を務めたハインツ・レイマンは、一九八〇年代に、組織における〈精神的な嫌がらせ〉に関して新しい概念を導入した。モビングである。

p114
さまざまなプレッシャーをかけたり、もっと露骨な嫌がらせを行って、そういった社員を会社から追い出すようになってきたのだ。すなわち、〈組織に社員を適合させる〉ために用いられてきた〈いじめ〉は、もっと乱暴に、〈組織から社員を追い出す〉ための〈モラル・ハラスメント〉に姿を変えたのである。

p135
〈嫌がらせ〉というのはどれも差別的な性格を持っている。というのも、差別というのは〈ちがい〉や〈特殊性〉を拒否する気持ちで、その気持ちが行動に出たものが〈嫌がらせ〉だからだ。

p156
同僚から受けた時よりも、上司から受けた時のほうが、被害は大きい。というのも、上司からモラル・ハラスメントを受けると、被害者はもう誰にも助けてもらえないと感じ、暗に解雇の不安すら感じるからである。

p158
健康上の理由で再就職できない、と答えた人のなかには、会社にいる時に受けたモラル・ハラスメントの傷跡が、心的外傷後ストレス障害(PTSD)やアイデンティティの喪失という形で生々しく精神に残っている人もいる。これでは確かに再就職は難しいだろう。というのも、そういった人々は自分に自信を失ったり、今度もそうなるのではないかと異様に警戒心が強くなったり、あるいは精神的に〈折れた状態〉になってしまっているので、新しい職場でもう一度がんばろうという気持ちが失われているからである。

p221
その症状のなかで、とりわけ被害者に苦痛を与えるものを挙げると、それはなんといっても、苦痛の再体験だろう。たとえば、〈心的外傷となった出来事(モラル・ハラスメントで言えば、人前で罵倒されて屈辱を受けた、等)が何度も思い出されて、そのことを考えずにはいられない〉、あるいは〈その時の場面が現実と同じくらいはっきりとよみがえってくる__フラッシュバック〉、〈眠りについたあとは、悪夢となって現れる〉などがそうであるが、こういった苦痛の再体験は長期にわたって続き、場合によっては一生続くこともある。被害者たちはいつまでたっても、この嫌な出来事を忘れることができない。

p245
モラル・ハラスメントというのが、〈非難された人間が非難されたとおりの状態になっていく〉という独特の経過をたどるものだということがよくわかる。「おまえは無能だ」と言われたら、人は自分の感覚が信じられなくなり、最後には本当に能力をなくしてしまう。また、「おまえは妄想症だ」と言われれば、警戒心が強く、疑りぶかくなり、本当に妄想症的な傾向が表れてしまう。これは恐ろしいことだが、〈言葉の持つ力〉が人を変えてしまうのである。

p319
おそらくエリート学校を卒業した最近の若者たちは、モラル・ハラスメントにあうことが少ないだろう。そういった若者たちは会社に対する感情的な結びつきが弱く、給料などの労働条件をはっきりさせ、もしその会社に失望すれば、迷わず転職するからである。

p328
私のもとに相談に訪れた被害者たちは口をそろえてこう言う。「どんな短い言葉でもいい。ほんのちょっぴり励ましてくれれば、それが何よりの助けになる」と……。これはうなずける。というのも、モラル・ハラスメントの状況でいちばん辛いのは、ひとりぼっちにされてしまうことだからである。

p331
モラル・ハラスメントに抵抗する__というより、それから逃れるための要素としては、〈会社を辞めることをあまり重大なこととして考えない〉ということが挙げられる。

p354
中間管理職のなかには、仕事上のストレスでイライラすると、そのイライラをそのまま部下にぶつける上司がいる。

p368
強迫的な性格の人の場合は、相手に対する強迫観念から、モラル・ハラスメントに走りやすいところがあるが、自分の性格の傾向をよく知っていれば、それを防ぐことができるからである。

p408
産業医というのは、企業のなかでも社員が会社に気がねをすることなく、自由に話をすることができる、数少ない人間のひとりである。

pp496-497
法律というのはガードレールのようなものにすぎない。だが、それでも、世の中にはこれこれという犯罪があり、それは決して認められないのだということを世間の人々に知らせる役割がある。また、法律は加害者と被害者に〈持ってはならない望み〉を断念させる。すなわち、法律が適用されることによって、加害者のほうは〈自分が罰せられない〉という望みをあきらめ、被害者のほうは〈復讐をしたい〉という望みをあきらめるのである。また、法律によって罰を下すということは、被害者の受けた行為が不当だったということを世間に知らしめる役割をはたす。これは決して小さなことではない。


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